心不全は、悪化と回復を繰り返し、徐々に病状が進行する病気です。症状がよくなっても、心不全が完全に治ったわけではありません。心不全の進行や再入院を防ぎ、悪化のきざしを早く発見するために、介護保険サービスを利用することも重要です。
介護保険サービスとは
介護保険とは、介護を必要とする人を社会全体で支えるためにつくられた制度で、40歳以上の方が保険料を納めています。
介護保険制度を使うと、何らかの介護が必要になったときに、訪問看護や訪問リハビリテーションといったサービスを、所得に応じて1割~3割負担で受けることができます。
介護保険サービスは
① 65歳以上の方
② 40歳~64歳の医療保険に加入している方で、特定疾病に該当する方
これを満たし、介護が必要であると認められた方が対象となります。
特定疾病
筋萎縮性側索硬化症 | 脳血管疾患 |
後縦靭帯骨化症 | 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核 変性症 およびパーキンソン病 |
骨折を伴う骨粗しょう症 | 閉塞性動脈硬化症 |
多系統萎縮症 | 慢性関節リウマチ |
初老期における認知症 | 慢性閉塞性肺疾患 |
脊髄小脳変性症 | 脊柱管狭窄症 |
糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症 および糖尿病性網膜症 |
両側の膝関節または股関節に 著しい変形を伴う変形性関節症 |
早老症 | 末期がん |
サービスの申請をすると、調査が行われ、要介護度(介護を必要とする度合い:要支援1・2、要介護1~5)が判定されます。この判定に応じて、受けられるサービスが決定します。
支援が必要な
患者さんとは
心不全の悪化を防ぐためには適切な治療と生活習慣の改善が重要ですが、療養生活の中で必ずしもいつもご家族の助けを借りることができるとは限りません。
例えば、ご高齢で一人暮らしの患者さんは
- お薬を飲み忘れる
- 食事の管理ができない
- 家事で疲れる
- 筋力が低下して転びやすくなる
このような状況では心臓に負担がかかり、再入院のリスクが高くなってしまいます。
これを防ぐために、介護保険サービスをうまく活用しましょう。
介護保険サービスを
使った心不全管理
介護保険サービスを使うと、お薬や食事の管理など、心不全の悪化を防ぐための重要なサポートを受けることができます。また、悪化のきざしを早く発見することもできるので、有効に活用しましょう。
訪問看護
看護師が直接自宅を訪問し、
患者さんの身のまわりのお世話や病状のチェック、
お薬の管理サポートなどを行います。
訪問介護
訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、
食事・排泄・入浴などの介護や、掃除・洗濯・買い物・
調理などの生活の支援を行います。
訪問リハビリテーション
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、心臓の働きの維持回復や日常生活の自立に向けたリハビリテーションを行います。
これらの他にも、利用者自身が施設に通い、食事・入浴の支援や体調のチェックを行う通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション、また、電動ベッドや車いすなどのレンタルサービスもあります。
介護保険サービス利用
までの流れ
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1
要介護認定の申請
患者さんがお住まいの市区町村の窓口で要介護認定(要支援認定を含む)の申請を行います。
または、地域包括支援センターなどの代行で手続きを行うこともできます。 -
2
聞き取り調査・
主治医意見書調査員が訪問して、聞き取り調査を行います。
また、医師が心身の状況について意見書を作成します。 -
3
審査判定
調査結果および主治医意見書に基づき、要介護度の判定が行われます。
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4
認定
認定結果を申請者に通知します(通常は申請から結果通知まで30日程度かかります)。
認定は、要支援1・2、要介護1~5の7段階および非該当にわかれます。 -
5
居宅/介護予防
サービス計画の作成介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっています。サービスを利用する場合は、地域包括支援センターまたはケアマネジャーと一緒に「どんなサービスを受けるか」、「どういった事業所を選ぶか」など、サービスの計画を立てます。
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6
介護保険サービス利用の開始
ケアプランに基づいたさまざまな介護保険サービスが利用できます。
お困りのことがあれば、お住まいの市区町村または地域包括支援センターに相談してみましょう。
2024年8月作成