心不全は、悪化と回復を繰り返し、徐々に病状が進行する病気です。症状がよくなっても、心不全が完全に治ったわけではありません。心不全の進行や再入院を防ぐためには、適切な治療に加えて、運動や食事など生活習慣の改善が重要です。心不全を悪化させないためのコツを知り、生活習慣にも気をつけながら、心不全とうまく付き合っていきましょう。

服薬

症状がよくなっても、心不全が完全に治ったわけではないため、お薬を勝手にやめてしまうと症状が悪化してしまうことがあります。医師の指示に従い、ご家族にも協力してもらいながらお薬を飲み忘れないようにしましょう。飲み忘れを防ぐには、1回に飲む数種類のお薬を、まとめて1袋にしてもらったり、お薬カレンダーの使用が効果的ですので、薬剤師に相談してみましょう。

服薬

禁煙

タバコに含まれるニコチンによって、血圧が上がったり、不整脈を引き起こすことがあります。心不全を悪化させないためには、禁煙が必要です。ご家族やまわりの人が吸っていても影響を受けますので、周囲の人にも伝えてみましょう。

禁煙

節酒

お酒を飲みすぎると、水分のバランスが崩れ、血圧も上がり、心臓に負担がかかります。お酒は適量(アルコール20g以下)の範囲内で、楽しむ程度に控えましょう。

アルコール20gの目安

ビール 中びん1本 (500ml)
日本酒 1合 (180ml)
ワイン グラス2杯 (200ml)
ウイスキー ダブル (60ml)
節酒

禁酒が必要な場合もあるため、どれくらいの量を飲んでもよいか、医師に確認しましょう。

感染症の予防

風邪など感染症にかかると、心臓に負担がかかり、心不全を悪化させる原因になります。手洗いやうがいを心がけ、いつもと体調が異なると感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。
感染症を予防するために、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。

禁煙

ストレス緩和と睡眠

心不全は、病気そのものの心配のほか、生活の変化や金銭的な負担などによりストレスを抱えやすい病気です。心配なことや気になることを一人で抱え込まずに、話しやすい人に相談しましょう。また、規則正しい生活を心がけて、十分な睡眠や休息をとりましょう。

便秘の予防

便秘による排便時のいきみは血圧を上げ、心臓に負担をかけてしまいます。排便時にはゆっくり息を吐いて、呼吸が乱れないように気を付けましょう。出にくい方は排便前にウォシュレットで肛門マッサージを行ってみてはいかがでしょうか。他に、食物繊維の多い野菜をとるなどの工夫をしても改善しない場合は、医師に相談し、下剤を処方してもらいましょう。

心臓に優しい入浴

心臓に優しい入浴方法を取り入れることで、血液の流れをよくし、心不全の症状を緩和することができます。

入浴前の準備 ・入浴前に脱衣所や浴室を温めておきましょう。
・空腹時や食直後、運動後の入浴は避けましょう。
入浴方法 熱いお湯は心臓に負担をかけるため、お湯の温度は40℃~41℃にしましょう。
・湯船に入る深さはみぞおちあたりまでにしましょう。
・湯船に入ってから出るまでの時間は10分くらいにしましょう。
・入浴後は安静にして、体を休めましょう。

注意が必要な動作

  • 掃除など前かがみになる動作は、長時間行うと心臓に負担がかかりやすいので注意しましょう。
  • 布団の上げ下ろしなど、重たいものの運搬はできるだけ避けましょう。

自宅でできる心臓ケア

生活習慣に気を付けながら心不全の悪化を防ぐとともに、悪化のきざしを見逃さないよう、体重・血圧を毎日測定し、朝起きたときに息切れやむくみがないか日々確認しましょう。

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  • 血圧の測り方

    • 血圧計は、心臓と同じ高さで平らな場所に置き、毎日同じ条件で測定しましょう。
    • 血圧測定前1分間~2分間は座って安静にし、呼吸を整えてから測定しましょう。
    • 食事、入浴、運動後の測定は避けましょう。
    • 毎日決まった時間帯(朝と寝る前)に測定しましょう。起床後1時間以内、排尿後、朝食前、服薬前の測定が理想です。
    • 上着やセーターなどで腕を圧迫しないように、できるだけ薄着で測定しましょう。
    • 測定した値は必ず記録し、経過を確認しましょう。
  • 足のすねを指で10秒間押し、その部分がへこんでいるかどうかでむくみが確認できます。靴下の跡が強く残る、靴がきつくなるのもむくみのサインです。

    このようなむくみや、前かがみの姿勢になって30秒もしないうちに苦しくて体を起こしたくなるようなときは、悪化のサインかもしれません。

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受診のめやす

早めに相談・受診しましょう
  • 今まで大丈夫だった距離でも歩くと息が切れる。
  • 1週間で合計2kg以上の急激な体重増加がある。
  • 手足がむくむ、またはむくみがひどくなった。
すぐに受診しましょう
  • 何もしていないのに息苦しい。
  • 横になると息苦しく、座っているほうが息が楽になる。
  • 血圧が低くフラフラする。

症状の変化には患者さんご本人よりも一緒に過ごしているご家族など周りの方のほうが気付きやすいこともよくあります。以前は問題なくできていたことが苦しそうに見える、呼吸の音がいつもと違うなど変化に気付いたら、早めに医師に相談してみましょう。

心臓リハビリテーションって何?

心臓の働きが低下し、安静な生活を続けると、体力が低下していきます。そのため、症状がよくなってもどの程度活動して良いか分からず、不安を感じることもあります。専門のスタッフによる、患者さんの快適な家庭生活や社会復帰を支える総合的な活動プログラムを「心臓リハビリテーション」といい、運動療法だけではなく食事療法、禁煙をはじめとした生活指導も含めて行われます。
心不全を悪化させないためのコツを知り、生活習慣を見直してみましょう。

【参考】
・一般社団法人 日本心不全学会. 心不全手帳(第2版). 2018. http://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/techo_book_new1_katamen.pdf
・特定非営利活動法人 日本心臓リハビリテーション学会. 日常生活での注意点. https://www.jacr.jp/faq-list/point/
・特定非営利活動法人 日本心臓リハビリテーション学会. 心臓リハビリって何? https://www.jacr.jp/faq/faq-list/general04/

2024年6月作成