近年、運動不足や食生活の変化などから肥満が増え、成人男性の約30%、女性の約20%が肥満にあたるといわれています。メタボリック症候群や肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症などを引き起こしやすく、心筋梗塞や心不全といった生命に関わる病気に繋がる可能性があります。
メタボリック症候群/
肥満について
メタボリック症候群とは
メタボリック症候群とは、腹囲が男性85cm・女性90cm以上で、高血圧、高血糖、脂質異常が2つ以上合わさった状態のことをいいます。糖尿病や脂質異常症などを引き起こしやすく、放置すると心筋梗塞や心不全といった生命に関わる病気に繋がる可能性があることが知られています。
肥満とは
肥満とは、体重が多いだけでなく、体内に脂肪が溜まった状態を指します。世界保健機関(WHO)ではBMI(体格指数)30以上を「肥満」と定義していますが、日本ではBMI 25以上を「肥満」と定義しています。
これは、日本人の場合、皮下よりも内臓に脂肪がつきやすく、軽い肥満でも糖尿病や高血圧、脂質異常症などの病気に繋がりやすいためです。
また、肥満に加えて高血圧や2型糖尿病、脂質異常症などの病気を抱えている場合、またはそれらの病気になるリスクが高い場合は心不全を含む心血管疾患のリスクがより高くなることが知られており、このような状態は「肥満症」という病気に当てはまります。
メタボリック症候群/
肥満の原因
主な原因は、食べすぎや運動不足により摂取したエネルギーが消費を上回ることで脂肪が蓄積することと考えられています。
日々のストレスや不規則な生活、早食い、喫煙、睡眠不足などの生活習慣のほかに、遺伝的な要因も関係するといわれています。
心不全とのかかわり
生活習慣の乱れは肥満をはじめとして高血圧や高血糖、脂質異常症などを次々と引き起こし、最終的には心筋梗塞や心不全といった重大な病気に至る可能性があります。
この連鎖は「メタボリックドミノ」と呼ばれ、その最初の一歩は日々の生活習慣の乱れです。
メタボリック症候群/
肥満の治療
生活習慣の見直し
メタボリック症候群や肥満の治療の主な目的は「メタボリックドミノ」の連鎖を食い止めることですが、そのためにはまず生活習慣を整えることが重要です。食事や睡眠、運動、喫煙や飲酒など日々の生活リズムを振り返り、無理なく続けられる工夫をしましょう。
また、健診の数値が正常範囲内でも長い目で見ると少しずつ悪化している場合があるため、生活習慣の見直しとあわせて定期的な健診が欠かせません。
- 食事療法
食事は摂取エネルギーを控えめにして、バランスのとれた内容を心がけましょう。
野菜などから食物繊維を多く摂り、間食を控え、よく噛んで食べることも効果的です。 - 運動療法
運動は日々の生活で「今より10分多く体を動かす」ことから始めましょう。長く座りつづけないように気をつけ、軽い運動に慣れてきたら筋力トレーニングを取り入れるのもおすすめです。
生活習慣や食事、運動のポイントは「心不全の悪化を防ぐために」でも紹介しています。このページでは心不全の悪化予防を目的とした内容を紹介していますが、これらはメタボリック症候群や肥満の改善にも役立ちますので、ぜひご覧ください。
薬物療法
食事療法や運動療法を続けることで血糖値や血圧、脂質の状態が改善することも多くありますが、肥満が進んで心臓の働きが落ちていたり高血圧や糖尿病を合併している場合などには、生活習慣の改善だけでは十分に効果が出ないこともあります。
その場合には、医師の判断で食欲を抑えて体重を減らす作用のあるお薬(GLP-1受容体作動薬など)による治療が必要になることがあります。
偏った生活習慣が続くとメタボリック症候群や肥満を招き、やがて心臓への大きな負担に繋がります。まずは食事や運動など生活習慣を整え、定期的に健診を受診することが、心不全予防の第一歩となります。
【参考】
・日本循環器学会/日本心不全学会.2025年改訂版心不全診療ガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf.2025年11月閲覧
・日本肥満学会.肥満症診療ガイドライン2022.
https://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html.2025年11月閲覧
・伊藤裕.日内会誌.2018;107:1913-20.
2025年12月作成
